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日本に忍びよるインフレ

30年間のデフレ

平成に入ってから賃金も物価も上がらず、経済が停滞するというデフレが日本で続きました。GDPも500兆円のまま。歴史的に見てデフレがここまで継続することも珍しく、日本政府はなんとかしてデフレをインフレにしようと経済政策を打ってきました。

 

インフレターゲットという言葉を聞いたことがあるでしょう。日本政府は数値を定め、物価上昇を企図してきたわけです。通常、インフレターゲットという言葉は、インフレが続くとまずいので、インフレにならないように物価上限を定める時に使われてきました。ところが日本ではインフレ状態にしたいから、物価上昇率を上げようとして、インフレターゲットという言葉が使われています。

 

日本だけでなく世界的に、物はこれまで不足しがちでした。物に価値があったわけです。供給力もありませんでした。当然、経済はインフレ気味になり、貨幣は改鋳され、価値は下落し、大帝国も貨幣価値暴落とともに終焉するというパターンが、歴史の定番。

 

その観点から見れば、日本における30年間のデフレ状態は、ある意味で異常。貨幣が強い力を持ち、高齢者、公務員、大企業サラリーマンといった安定収入を持つ人たちが勝ち組として、君臨。これは、よくない。貧しい若者が才覚と努力でのし上がることこそ資本主義の活力なのに、それができにくい社会になっているからです。

 

21世紀に入ってホリエモンという若手社長がメディアに登場し、話題を振りまきました。20 年ほど前のことです。お金で買えないものはないという言葉を言いながら、自分を見習ってみんなにもお金を儲けてほしい、最終的に人生はお金だけでないと分かってほしいという情報発信。

 

ライブドア事件で失脚。ホリエモンは拘置所に入れられました。今もライブドア事件の真相は世に広まっていません。ライブドア事件というのは、一言で言うと、増資と借入どちらとも取れる会計処理をめぐり、不正経理があったと検察がライブドア幹部を逮捕した事件です。違法性はほとんどありません。

 

拘置所に行くホリエモンを見て、同情した人は少なかったでしょう。ホリエモンが挑戦していたの相相手日本人のデフレ根性でしたが、日本社会は彼を蹴落としました。上昇志向を喧伝する彼の姿は多くの日本人にとって異端にすぎなかったのです。

効果的な財政出動が必要

昨年あたりから世界的にインフレが指摘され始めました。アメリカではインフレ率が7%を超えたという報道もあります。当然、アメリカ連邦準備銀行は金利を上げ、物価上昇を抑えようとします。日本では今もインフレなく、日米金利差が開きつつあります。

 

これが昨年後半から始まったドル高円安の基本的な原因。現在1ドル120円前後の相場。ここ20年ほど、デフレ日本の円は世界的にも強かった。けれど日本が低金利、外国が高金利なら資金の流れは外国へと向かいます。円をドルに換える動きが加速。

 

やがては日本にもインフレがやって来るでしょう。政府、財界が待望してきたインフレがやっと日本にも来るということ。これは一見、良いニュースに聞こえるかもしれません。けれど現状で日本がインフレになる場合、輸入物価上昇によるコストプッシュインフレ。原油価格上昇し、物価転嫁され、インフレが起きるということ。

 

ここで考えてみましょう。インフレの代表的要因は通常、経済過熱。資本主義経済は周期的に過熱と冷却を繰り返します。過熱時に引き締め、冷却時に緩和。ちょうど今、アメリカ連銀が金利を上げつつあるのは、過熱したインフレを抑えるためですね。

 

けれどコストプッシュインフレの場合、経済過熱してもいないのに、輸入物価上昇により、インフレ惹起されます。つまり物価上昇しても、経済過熱ないわけですから賃金上昇しない。経済用語でスタグフレーションという言葉があり、賃金上昇なしの物価上昇を意味します。コストプッシュインフレは、このスタグフレーションを引き起こすのです。

 

日本で30年間続いたデフレ。それがやっとインフレに変わるかと思いきや、賃金上昇せずに物価上昇するというコストプッシュインフレが目前に来ています。国民のさらなる貧困化は避けられません。

 

今こそ経済過熱による賃金上昇、それが物価上昇につながる本来の動きを作らねばなりません。今、日本の民間セクターに、その動きを作る力がありません。政府の効果的な財政出動しか、その動きを作りだせないのです。

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コメント: 6
  • #1

    田上正人 (日曜日, 10 4月 2022 19:42)

    ゆめラジオさんの第1回目の放送を拝聴しました。
    このポストはどちらかと云えば反論です。読んで頂けることを願って書いています。

    (1)松本さんのお話しは、元財務省の高橋洋一氏が述べたこと(財政破産しない)とほぼ同じです。

    (2)高橋氏の論には2つの誤魔化しがあります。
     
    (2-1)B/Sを作ると、政府には純資産が600兆円ある。
    高橋氏が作ったB/Sには、将来の政府年金と医療費の補填分(支給額-保険料収入=約40兆円/年)が入っていません。

    これを入れると政府負債は、25年分として、1000兆円膨らみます。米国政府のB/Sには、これがはいっています。国民との支給契約だからです。

    企業会計では、退職金の過去勤務債務分(今年退職したとして支給しなければならない退職金)を、負債にします。

    ところが、このB/Sでは、政府年金と医療費の補填分(支給額-保険料収入=約40兆円/年)を入れていません。まやかしのB/Sです。

    正当に言えば、政府B/Sは、400兆円くらいの債務超過です。

    (3)日銀が国債を買い続ければ、政府の債務は、日銀の通貨発行に置き換わる。これはこの通りです。

    問題は、金利が上がって、国債価格が下がり、日銀が債務超過になったときです。530兆円のゼロ金利国債をもつ日銀は、国債長期金利のわずか0.4ポイントの上昇で債務超過になります。

    日銀が債務超過になると、海外投資家は、円先もの売りで利益を得るチャンスと見て、大挙して円の売りにかかります。これが起こると、円の金利は上がって、国債価格は一層下がり、日銀の債務超過は大きくなり、円はますます売られるようになります。

    例えば30%円安になつと、輸入も物価も30%上がり、現在のガソリン代、電気料、ガス代金のように消費者物価は、10%は上がるでしょう。そのとき、円の金利は、10%を目指して上がってきます。

    こうした、物価と金利の上昇サイクルが起こって、国債の金利はどんどあがり(国債価格は下がって)、政府は、デフォルトします。

    概略ですが、以上です。

  • #2

    ゆめラジオ (日曜日, 10 4月 2022 20:13)

    あ、コメントありがとうございます。

    私の国債に関する情報源は、ご指摘のとおり、高橋洋一さんの情報であること多いです。高橋さんの計算に誤りあり、医療費補填分を入れれば400兆円の債務超過となる、ということは今回、田上さんからのご意見で初めて知りました。私なりに調べてみます。

    ただし400兆円の債務超過でも、国家財政としては健全の範囲と考えます。国家は永続するという考えに立ちますから。

    ただし金利については、私も危惧を抱いています。岩盤のように見えた円高も、今回すっと円安になりました。日本政府が借金し続けていることは間違いなく、これが本当に深刻と市場で認識されれば、売り加速する可能性があります。この点についても、今後、調べてみます。

  • #3

    田上正人 (月曜日, 11 4月 2022 13:36)

    コメントを読んで頂きありがとうございます。
    お返事にある「国家は永続する」についてはよく理解出来ません。簡単で構いませんのでご教授くださいませんか。

  • #4

    田上正人 (月曜日, 11 4月 2022 20:50)

    松本さま
    コメントを読んで頂きありがとうございます。
    頂いた返信にある「国家は永続する」という立ち位置は歴史的に一意なものではないと思うのですが、あまり理解出来ません。簡単で構いませんのでご教授頂けませんでしょうか?
    どうぞ宜しくお願い致します。

  • #5

    ゆめラジオ (月曜日, 11 4月 2022 20:57)

    国家は個人、企業と比べ、ずっと続くという前提が可能です。ですから借金する場合でも、その許容量は大きくなりますね。そのことです。

  • #6

    田上正人 (月曜日, 11 4月 2022 21:25)

    バタイユが指摘した一般エコノミーが内包する栄光のエコノミーによって2000年分の余剰が焼尽を要請しているように感じます。