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実存哲学とは?

19世紀前半のキルケゴールから19世紀後半のニーチェ、そして20世紀前半のハイデガーを経てサルトルへ至る流れが、およその実存哲学の系譜です。

 

実存哲学とは何でしょうか? 実存は「現実存在」を短縮した言葉で、実存とは現実に人間が置かれている状況を意味します。実存哲学以前には実存は哲学テーマにならず、神と人間の関係、あるいは被造物世界を人間がどう認識するかが重視されました。

 

この意味でニーチェの「神は死んだ」という言葉は衝撃でした。この言葉により、神や被造物という言葉が哲学から消え、代わりに人間が哲学テーマとして登場し始めたのです。

 

神なき時代、人間が置かれた状況は「投げだされている」と実存哲学では説きます。投げだされた人間がもがきながら生きていく状況を取りあげ、サルトルはこれを哲学だけでなく文学作品に落としこみ、豊かな作品群を作りあげました。

 

サルトルと同時代のカミュ、カフカも実存文学と言っていいでしょう。それは不条理文学とも呼ばれ、カフカの「変身」などは主人公が虫に変身している場面から小説が始まります。これが「投げだされた」人間の姿というわけです。

 

サルトルがマルクス主義者だったことから、やがて実存哲学は社会主義の色彩を帯びるようになり、20世紀後半に社会主義体制が崩壊していくにつれ、実存哲学も読まれなくなっていきました。哲学は時代を映しだします。